最近「自社で進めているイノベーションプロジェクトをうまく評価できない」という相談を立て続けに受ける機会があり、その要因について考えてみる。そのすべての相談に共通していたのはまず第一に、「自社にとってのイノベーションとは?」という共有化された定義が無いこと。

次に、そのプロジェクトがどのような成果を目指すのか「プロジェクトの野心のレベル」が設定されていないことが、根本的な要因となっている。

この2つが十分に話し合われていないことで、どこを目指すのか、どのようなプロセスを採用するのか、成功の基準は何か、ということにおいてチームで共通の認識が持てず、議論の空転が続いていた。

ということで、今日は野心の3つのレベルについて紹介したい。

(イノベーションの定義については会社によって捉え方が違うのでここでは扱わない)

<イノベーションの野心の3つのレベル>

野心レベル1:現状のものを変える。

既存企業は、自社の製品の新鮮さと競争力を維持するために日常的に改良を行っている。インタビューや観察といった方法から問題を発見し、それを良くするプロセスである。このアプローチはまず間違いなく、顧客に新しい優位をもたらす。一方でそれが業界で認知されると競合相手が素早く模倣、対応するので、その優位は通常長くは続かない。このアプローチは自社が既にカテゴリーリーダーである場合は特に有効である。

野心のレベル2:境界を変える。

従来自社が提供していた製品、サービス価値提供の範囲を超えて、顧客のためにより包括的なソリューションの検討を必要とする。例えば、ハーレーダビッドソンはその熱烈な顧客層に長く支持されており、「ガレージ・パーティー」と呼ばれる定期的な集まりや、世界各地で開かれるイベントを通じて彼らとの繋がりを維持するために努力を重ねている。日本ではスノーピークが既存のキャンプ用品メーカー業界の枠組みを超えて顧客の新しいロイヤリティ獲得に成功している。

野心のレベル3,ゲームを変える。

これまで業界内で競争していた属性での競争をやめ、それ以外の属性で同時多発的にイノベーションをおこし、産業構造を根底から変えてしまうことを目指す。これには深い洞察と、プロジェクトオーナーの強烈な野心が欠かせない。たとえばGEアビエーションは、メンテナンス、資材管理、資産管理を統合したワンストップソリューションと、エンジンの稼働時間による課金方法で、エンジン製造業から、最適な運航を支援するコンサルティング業にシフトし、航空機産業に革命を起こしている。

どの野心もリスクもリターンもあるし、正解も不正解もない。

ただ、これから始める自社の取り組みはどの野心に沿うものか、予め設定しておくだけで、メンバーの活動のベクトルが定まり、地に足のついた議論をすすめることができるように思う。

プロジェクト立上げ時には是非とも、「野心」ついて話し合ってほしい。