デザイン思考とは?

デザイン思考は、2000年代初頭から米スタンフォード大学を中心にシリコンバレーの産学で有名になり、今では全米もとより世界の教育・産業で広く応用されるようになった人間の感情的なニーズや普遍的な欲求を起点に課題解決や新たな価値を生み出すために用いる方法論/マインドセットです。

日本でもここ数年ポピュラーになり、イノベーションが生まれない日本企業の悩みを解決すべく、デザイン思考を学び経営やマーケティングに取り入れる企業が今でも増えています。

デザイン思考は”魔法の杖”ではない。

ところが、いくらお金をかけてデザイン思考を学び、新事業開発やマーケティングに応用しても、顕著な効果が出ないケースが少なくありません。
またそれゆえにデザイン思考にあまりよくない印象を持つ人も出てきたように思います。

どんな方法論も同じですが、効果が及ぼす影響が大きいものであればあるほど、学んでから成果に繋げるには時間がかかります。特にデザイン思考はマインドセット(考え方や取り組み方)に効果を及ぼすウェイトが大きいため、単に学べばうまくいくというものではありません。

デザイン思考の後半では、トライし、失敗し、失敗から学び素早く改善するサイクルを繰り返すことでアウトプットの質を高めていくという考え方が強調されますが、これはエンドレスに続くもの、続くべきものです。(これは、当社に相談いただくお客様にも念入りに説明しています。)

一方で、デザイン思考の効果が実感されるケースも増えてきました。それは、デザイン思考を組織に取り入れることによる、人の働き方と組織の健全なあり方に及ぼす効果です。

デザイン思考による理想的な組織文化の構築

私たちbridgeでは、企業の新規事業/新商品開発の支援、組織が抱える様々な課題を解決するためのプロジェクトの支援をしています。
多くのプロジェクトでデザイン思考のアプローチをベースに進めていきますが、数々のプロジェクトを支援してきたなかで、デザイン思考が人と組織にもたらす影響を強く実感してきました。

デザイン思考で実プロジェクトを動かす際に、まず対象とする領域を絞り、
「どうすれば物事が良く/もっと良くなるだろうか」
という問いを立てるところから始まります。
(スティーブ・ジョブズが「どうすれば大量の音楽をもっと手軽に楽しめるだろう?」という問いのもとにipodというイノベーションが生まれたことはよく知られています。)

その後、ユーザーを観察し、立てた問いの”確からしさ”の精度をあげていくことを繰り返し、アイデアを出し、アイデアをユーザーに検証し、プロトタイプと検証を繰り返す過程でアイデアの妥当性を高めていくというプロセスを繰り返していきます。
このプロセスを理解し、組織に定着させることで、イノベーションの種が複数生まれ、育っていく土壌が形成されていきます。

価値創造に不可欠なふたつの要素

企業において、その最たる成果として目指すのが、「新規事業による経営業績の向上」となるわけですが、私たちが数々のプロジェクトに携わる中で、実はあまり注目されていない二つの要素にデザイン思考の真髄があるという答えに行き着きました。

それは、プロジェクトに関わる全員がその過程で身につけていく、
1.「創造的活動」
2.「利他的思考」

が新たな価値創造に及ぼす影響という側面についてです。

創造的な活動と、「誰かを幸せにしたい/痛みを軽減させてあげたい」という利他的な動機が物事の生産性を高めるということは様々な研究で明らかになっていますが、事実デザイン思考をベースとしたチームワークを進めていくと、チーム全員のマインドが”自分”から”他人”へ、”やらされ感”から”ワクワク感”へ推移していく様子が明らかに見受けられるのです。

また、「創造的活動」の活性化と「利他的思考」の活性化が相互に影響し、互いにその効果を高めるということもわかってきました。創造的活動によって広く誰かの幸せを作り出すことの意義を感じ、そのモチベーションが高まることによってさらに組織が創造的に進化していきます。
この「創造的活動」と「利他的思考」を増進させ、イノベーティブな企業文化を形成していくプロセスこそがデザイン思考の真髄であり、その結果として共創による新たな価値が生まれ、将来の事業の業績につながります。

-マレーシアでの新規事業プロジェクト最終日の様子。「どうすればイスラム教徒の人たちの美と健康の課題を解決できるだろうか?」という問いを立て、約1ヶ月の間現地のバディとともに活動し、現地の人々への深い共感と理解のもとにイノベーティブな新規事業が生まれた。-

デザイン思考アプローチは様々な部門で応用可能

ところで、デザイン思考は、経営企画、新規事業部部門など経営に近い部門が現状打破の目的で取り入れることが多いですが、実は営業部門や社内の間接部門が自社内外の現状のあり方を改善する際にも効果を得られることが多くあります。企業文化の改革という意味では、間接部門が持つ影響力の方が強い場合も多々あります。

■営業

顧客との接点、顧客が体験するサービスプロセスに多くの改善の余地が残されていることがよくあります。特にBtoBビジネスの場合、顧客が自社の製品を知り、購入を検討し、使い続ける過程で多くの人が関わり、多くの課題解決に貢献できる余地があります。(言い換えればこれが新たな利益のポイントになることも少なくありません。)
売る事だけが目的になっているのならば、「どうすれば顧客に価値を提供し続けられるサービスプロセスを実現できるだろうか?」という問いを立て、見落とされている顧客価値創造のポイントを見つけてみることで複数の小さなイノベーションを起こせる可能性があります。

■広報/マーケティング

社外へのPRを担う広報部門にも、デザイン思考的アプローチが応用できることが多くあります。例えば、「どうすれば、顧客に嫌悪感やストレスを与えずに自社の魅力を知ってもらえる広告ができるだろう?」という問いを立てて顧客の困りごとに目を向けてみたり、顧客がどのように企業の情報を得ているかを知る事で、現状の広告やPRを見直し、効果を高めるためのブレイクスルーが見えてくるかもしれません。

■人事

人と組織に影響力を持つ人事部門には、デザイン思考を取り入れることで効果を見込める余地が大いにあるはずです。なぜなら前述の通りデザイン思考は”人”を起点にした課題解決のアプローチであり、言わずもがな組織は人によって成り立つものだからです。
既存の業務プロセスや社内の制度、働き方を見直してみることで、働き方改革や生産性改善が実現し、これは多くの企業が悩んでいる採用のためのブランディングや社員のエンゲージメント向上にもつながります。

まずは身近な所から、小さな問いと共感を育てる

自分以外の誰かに貢献したいという利他的な動機が起点となり、その対象範囲が広ければ広いほど影響力は大きくなります。
しかし、対象範囲が広ければ広いほどに難しいものになることも事実です。
まずは身近な人たちへの共感を起点に、小さなイノベーションを目指してみることをお奨めします。そのために、まずは社内の業務改善にデザイン思考を用いてみることも有用です。

今も多くの企業がデザイン思考でイノベーション創発を目指して取り組んでいます。
しかしこれまで述べてきたように、そこに関わる人が創造的活動にワクワクし、誰かを幸せにしたいという利他的なモチベーションを持ち続け、継続的に活動していくことが不可欠です。そのような文化を組織に定着させることに、デザイン思考は役立ちます。

「どうすれば自社の業績を改善する新商品が生まれるだろうか?」
「どうすればもっと広く、人々が幸せになる価値を届けられるだろうか?」

新規事業や新しい取り組みを始める際に、そこに関わる人々がよりワクワクする問いはどちらでしょうか?

もし後者なら、ぜひデザイン思考を取り入れてみてください。

written by 鈴木郁斗/株式会社bridge

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