小柳さん

日本では65年以上にわたって様々な疾患領域において事業を展開し、信頼性の高い医薬品を提供してきたファイザー。今回は、アップジョン事業部門 精神神経・循環器領域マーケティング部長 小柳英さんにお話を伺いました。

提供サービス:既存事業の改善・拡張


課題

患者さんの深い理解と、QOLを高めるための機会探索

bridgeがしたこと

エスノグラフィー調査を通じた患者さんの理解とペルソナ・カスタマージャニーマップ開発、ソリューションアイデア創出

今後の展望

特定した課題、機会領域に対する施策実行


-アップジョン事業部門のミッションについてお聞かせください。

アップジョンは、高品質で信頼の高い医薬品で、世界中のあらゆるNCD(非感染性疾患)患者さんの負担を軽減することをミッションに掲げています。
NCDの治療は長期化する傾向があり、患者さんやご家族の負担だけでなく、社会的なコストも大きく、近年、世界的に非常に注目されています。我々が扱う医薬品は臨床試験で有効性が検証されており、適切に使用いただければ患者さんにメリットをもたらします。

しかし、日本ではNCDを上手にコントロールしていくという意識が低く、未だ未治療の患者さん、治療を脱落していく患者さんが数多くいらっしゃいます。ですので、薬剤が必要な患者さんに1日でも早くその情報を届けたいという風に考えています。

ただ一方で、情報を届けないといけないと言いながらも、やはり情報を届けるのは簡単ではないんですよね。医療従事者の方々のご経験や、知見、価値観に加えて、我々としても、適正使用情報の提供はもちろん、実際に薬を服用する患者さんにどういった価値提供できるのかも一緒に考えていく必要があると考えています。

-今回、実際の患者さんのことゼロから理解しようとエスノグラフィーのプロジェクトを始動された背景について教えてください。

もともと僕は全く違う疾患領域でマーケティングの仕事をしていたのですが、患者さんが服用する薬剤を作っているにも関わらず、どちらかというと医療従事者の方とのコミュニケーションが優先されてしまうことが多かったように感じていました。

ですが、我々は誰のために仕事をしているかというと、間違いなく患者さんのためなんですよね。ドクターの得意とする領域の医療や治療方法を熟知するのも重要ですが、我々のような製薬企業の本当のゴールはそういった専門性を極めることだけではなくて、患者さんへの価値提供だと思います。なので、メーカーも患者さんのことをもっと深く認識する必要があるんだと思うんです。

どういう患者さんが我々の薬剤を使っていて、どんな生活をおくり、ドクターとどんなコミュニケーションをとっているのかを知るためにはまず、”市場を知る”ではなく、”患者さんを知る”ところから始めないと、本末転倒かなと思ったんです。それが今回のプロジェクトを立ち上げたきっかけです。

-リサーチ会社に調査代行委託するのではなく、自分たちで患者さんの生活を直接見に行くという選択をされたのはどのような狙いがありましたか?

やっぱりわかった風にならずに、先入観を持たずに患者さんのことを知りたかったんですよね。全く知らない外国で、現地の方々が何をしているのかを一挙手一投足見て、その時初めてその人たちがどんな時に何をどう感じているのかを知るような感覚というか….
また以前、我々がレポートから机上で想像していた患者さんのイメージと、実際の患者さんたちの生活や雰囲気があまりにも違うことがあり、やっぱり自分たちで直接見聞きしないといけないなと強く思ったことが始まりです。

先程述べた、臨床での治療についてディスカッションし出すと我々はやはり医療従事者に対して遅れをとる部分がありますけど、患者さんの望むものだとか、生活については、実は我々も一緒に議論できるところだと思うんですよね。

なので、患者さんの生活を直接見聞きすることで、医療従事者すら知らなかったことなどを我々が沢山知り得ることができると、医療従事者の方にも薬剤の適正使用に関する情報提供を超えた支援ができると考えてます。そういった効果も実施前には期待してましたし、実際プロジェクトをやってみて多くを得ることができたと感じています。

-特にbridgeにご期待されたことは何ですか?

エスノグラフィー手法を通じて、製品やサービスのユーザーをゼロから考察するって、実はこの業界だとなかなかやらないと思うんです。実際、絶対的なインサイトを得ることができる保証があるわけじゃないですし、だから結構リスクのある調査だと思います。

ただ先ほど述べたようなプライスレスな価値を得ることも期待できますし、今後もし定量調査をやるにしても、イシュー出しの質が変わってくると考えていたので、空振りしてもいいから僕はやるべきだと思っていました。
なのでずっとそういったことをやりたいなと思っていて、そういった背景や期待も踏まえて、うまく我々をファシリテートしながらゴールに導いてくれるようなパートナーを探していました。
今回はいわゆる調査会社ではなく、協働型で患者さん理解のプロジェクトをすすめてくれるパートナーとしてbridgeさんにお声がけさせていただきました。

-プロジェクトを通じて考案したアイディアや施策についてはどう評価されますか?

業界的に規制やら何やらで、なかなかフラットに意見を出しにくい部分もあります。
ですがアイディア出しの時にはある程度拡散はしながらも、よりクリアで具体的なアクションベースの話ができたかなと思います。何より、患者さんの体験を起点に、どのようにすればQOLを高められるか?どんな貢献ができるか?そこから我々の価値は何か?を議論できたことは大きいと思います。チームみんなでベクトルを揃えることができたというか。

医療業界では、同じ薬剤クラスの医薬品の差別化は難しいので、薬剤自体のそのもの価値を超えてどのような付加価値を提供できるかが大切になっています。薬のマーケティングという観点からも患者さんを深く理解するということは、あらたな付加価値をつくる上でとても重要なアプローチかなと、改めて実感しています。

-今後の展望についてお聞かせください。

患者さんをより深く理解し、NCD治療のパートナーとして、一人ひとりの患者さんのQOLの向上と健康寿命の延伸に貢献したいと思っています。厚生労働省が健康寿命を促進しようと言って「人生100歳時代」を掲げたことで、法律が我々の活動に追い風になっているわけなんですね。

その勢いに乗って今回出したアクションプランをいかに届けられるか。そしてそれがどれだけ患者さんに貢献できているのかをしっかり検証することですね。それらを経てプロジェクトをブラッシュアップしていきたいと思っています。