デザイン思考や、エスノグラフィー、ペルソナといったキーワードは実際のビジネスの現場でもごくごく当たり前に使われるようになり、例えば日本の伝統的な中小企業のようにこれまでは縁遠かった組織においても、こういったメソッドを使ってプロジェクトを企画されるケースが増えてきました。一方で手法論や成功例が先行し、十分な理解が形成されないままスタートしているプロジェクトを散見します。今回はプロジェクトの企画段階における3つのマインドセットについてお話したいと思います。

*ゴールに対するマインドセット

顧客が行動するのは、企業のためではなく、自分自身の欲求を満たすためです。しかし、現実のプロジェクトでは、「どのようにすれば自社の製品を買ってもらえるか」、「自社を好きになってもらえるか」という問いを起点にしてしまいがちです。このような問いの問題は、顧客の態度や行動を変える手段の検討に終始し、顧客の欲求や願望について深く考えなくなってしまう点にあります。サービスデザインのプロジェクトの一つの醍醐味は複数の組織を顧客の視点で結びつけ、組織サイロを超えた体験の実現にあります。意識的に問いを顧客の視点に置き換え、部門を超えて協力できる所有感のあるゴールをつくることが重要です。

*プロセスに対するマインドセット

デザイン思考のアプローチは共感、学習を重視します。不確実なものを受け入れ、五感をつかって理解し、どう学習するかという心構えが必要です。ビジネス側の作法としてはベストな回答を求めて分析を繰り返し、組織のレポートラインに正確に報告する。ということを望まれますが、デザイン思考のアプローチでは、顧客の体験を生々しく共有し、ベターを求めてどれだけ実験を繰り返せるかという視点が大切になります。もちろん、ビジネスとしてどう勝算があるかということを検討する必要はあります。大事なのは、ビジネス側の作法とデザイン側の作法の両方を理解した上で、そこを行き来きするという考え方です。

*モチベーションに対するマインドセット

一連の取り組みによって生み出されたコンセプトやアイデアが顧客のニーズや組織のゴールと合致していることはもちろんですが、最後はそのことをメンバー自身が実現したいと思えるか?という視点が非常に重要です。(実際に、プロジェクトの最終段階で開発した施策をプロジェクトリーダーとて実現したい人の挙手を求めたところ誰からも手が挙がらないということもあったりしました。。。)プロジェクトに参加する人はそれぞれに意味や目的を持っています。なぜ自分は参加するのか、自分が参加して得たい個人的なゴールは何か、プロジェクトチームの編成段階で共有しておくことが大切です。メンバーが達成したいことが見えることで部門や組織を超えて本当の意味での協力が始まります。

プロジェクトの企画段階では、リーダーは特にこのマインドセットを意識する必要がり、そのデザインこそが腕の見せ所だったりします。