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エフェクチュエーションによる新規事業開発:5つの原則と組織変革のヒント

はじめに

新規事業は、データや過去の経験だけに頼るのではなく、個人の主観や直感を大切にして実験を繰り返していくことが大切です。市場の反応がなければ「脈ナシ」と結論を出し、次の試みに移るための考え方が必要になっていきます。

今回は、このような新規事業開発の成功に不可欠であるエフェクチュエーションについて解説していきます。

エフェクチュエーションとは

「エフェクチュエーション」は、サラス・サラスバシー教授によって提唱された起業家の行動原則を基にした概念です。「コーゼーション」戦略が明確なゴールを設定し、その達成に必要なリソースや手順を逆算して計画するのに対し、「エフェクチュエーション」は、不確定な未来に向けて、今手元にあるリソースを活用し、柔軟に戦略を展開していきます。

過去のデータに基づいて予測を立てるコーゼーション戦略は、十分な情報があり、変化の少ない状況で効果的です。目的に対して最適な手段(原因)を追求するコーゼーションは、すでに確立された事業領域で効果を発揮します。しかし、いまだ市場が存在しない新規事業の場合では、あらかじめ目的が明確で、最適な手段を特定できるとは限りません。

このように情報が少なく予測が難しい状況に適しているのがエフェクチュエーション戦略です。所与の手段に集中し、予測ではなくコントロールを重視することで望ましい未来を作り出します。
コーゼーションとエフェクチュエーションのどちらかに固執するのではなく、両方のアプローチを考慮しながら進めることが大切です。特に市場創造などの予測不可能性が高い状況においては、エフェクチュエーションの比率を高め、両利きの経営を重要視することが必要です。

エフェクチュエーションの5つの原則

エフェクチュエーションは、次の5つのヒューリスティクス(原則)に基づいています。

手中の鳥の原則(Bird in Hand)
起業家は、手元にあるリソース(スキル、ネットワーク、資金)を最大限に活用して事業の方向性を模索します。まずは自分の強みや持ち味を理解し、それを基に事業アイデアを組み立てます。

許容可能な損失の原則(Affordable Loss)
失っても良い範囲でリスクを取ることで、事業の失敗を最小限に抑えます。過剰なリスクを避けつつも、小さな賭けを繰り返すことで、大きな損失を防ぎます。

クレイジー・キルトの原則(Crazy Quilt)
異なる視点やスキルを持つパートナーと連携することで、予想外のリソースやアイデアを得ます。パートナーシップを築くことで、アイデアの質と事業の柔軟性が高まります。

レモネードの法則(Lemonade)
予期せぬ事態や失敗を、新しいビジネスチャンスに変えることを重視します。逆境を糧にしながら、即座に新しいアイデアを生み出すことで事業を成長させます。

パイロットの原則(Pilot in the Plane)
自らの行動や意思決定によって未来を創造し、偶然の出来事や外部要因に頼らず、独自の戦略で事業を展開していきます。

エフェクチュエーションのプロセスモデル

エフェクチュエーションは、起業家の初期リソースやパートナーシップから始まります。ゴールはフィードバックや市場の反応を見ながら調整されていきます。

  1. リソースの特定
    手元にあるリソース(スキル、人脈、資金)を分析し、それに基づいてなにができるかを検討します。

  2. パートナーシップの構築
    自分の持つリソースに欠けた部分を補うためのパートナーを見つけ、連携を深めます。すでに知り合っている人々や、新たに出会う人々との異なる視点の組み合わせが、新しい発見をもたらします。そうすることで、手持ちの手段が増えたり、新たな目的が加わることがあります。

  3. 戦略のテスト
    許容可能な損失の範囲内で小規模な実験を繰り返していきます。もちろん失敗や予期せぬ出来事も起こりますが、それを避けるのではなくむしろ活用し、資源を拡大していきます。

  4. 適応とフィードバック
    市場からの反応や失敗経験を活かし、戦略を柔軟に修正します。状況に合わせてパートナーとの関係を強化しながら、ビジネスモデルを最適化していきます。

エフェクチュエーションの組織導入と実践

エフェクチュエーションを企業に導入するためには、従来の硬直的な組織体制から脱却する必要があります。以下の4つの取り組みが重要となります。

・リーダーシップのあり方を見直す
現場の判断を尊重し、トップダウンの指示のみに頼らない柔軟なリーダーシップが求められます。部下の自主的な意思決定を後押しし、現場の意見を取り入れながら方針を調整できるリーダーを育成することが不可欠です。

・許容できるリスクの範囲を明確に
失敗を過度に恐れることなく、小さな賭けを積み重ねていけるよう、従業員にリスクを取ることの重要性を示します。失敗は学びの機会であり、許容できるリスクの範囲を明確に定め、積極的な試行錯誤を促す環境を整備します。

・内外のパートナーシップを構築する
組織の内外にかかわらず、多様な視点を持つパートナーと連携することで、新鮮なアイデアを生み出すきっかけとなります。既存事業と新規事業の連携を深めることも、組織全体の柔軟性を高める一助となるでしょう。  

・フィードバックを次のアクションに生かす
試行から得た経験や教訓を現場で共有し、次の行動に活かせるようにします。オープンなコミュニケーションを促進することで、組織全体の知見が蓄積され、継続的な改善につながります。

このように組織文化とリーダーシップを転換することで、エフェクチュエーションのサイクルを円滑に回すことができるようになります。

おわりに

エフェクチュエーションは、新規事業開発において有効な戦略です。過去のデータだけに頼るのではなく、現状のリソースを最大限に活用し、小さな試行錯誤を重ねながら新しい価値を生み出していきます。
しかし、その実践には組織の大胆な変革が不可欠です。
株式会社bridgeでは、今回解説したエフェクチュエーションのサイクルを促進できるような組織づくりを支援しております。不確実性に満ちた未来に挑戦し続けるための心構えと、実践のヒントをお伝えできれば幸いです。

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