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新規事業を生む組織に必要な5つのポイント

多くの企業において新規事業創出への期待感や、不透明なビジネス環境の変化に対する危機感の高まりとともに、新規事業提案制度や企業内起業制度など、「0→1」を始めるための制度導入が進んでいます。

一方で、このような声をよく耳にするようになりました。

  • 募集したけど、そもそもアイデア提案が少ない
  • 有望なアイデアがない
  • アイデアを評価、選定できない
  • 選定したアイデアを事業化まで育てられない
  • 成果が見えないので、来年も続けるべきか悩んでいる

多くの場合、『新規事業提案制度を導入さえすれば、社内の新規事業開発活動が活性化する』という間違った期待から、このような悩みが生まれています。そこで今回は、これまでbridgeで関わったプロジェクトの経験を通じて見えてきた、「新規事業開発活動が活性化している組織」の共通点について、5つのポイントから解説します。

事業創出に重要な5つのポイント

ポイント1:自社のイノベーションとは何かを定義する。(地図とコンパスを持つ)

イノベーションという言葉がそこかしこで使われています。しかし、『御社にとってイノベーションとはどのような定義ですか?』と訊ねると、ほとんどの企業は答えることができません。また、『どの領域で新規事業を起こしたいですか?』と尋ねても、『本業に少しでも関係していれば…』『XX億くらいの商売にできれば…』といった、曖昧な答えしか返ってきません。これでは、地図もコンパスも持たず、ガイドの同行もなしに、無謀な宝探しに出掛けるようなものです。

新規事業が活性化している組織は、自社が提供できる価値やビジョン、有りたい理想の姿、社会的な課題や機会が全体で共有され、目指すべき方角が示されています。全方位で何でもOKで漫然とスタートしてしまうと、有望なアイデアを発見することも、見つけたアイデアを正しく評価することもできず、場当たり的な意思決定に終始してしまいます。

ポイント2:目標・指標をつくる。(道中の道標をきめる)

事業づくりは、内外にわかりやすい成果として見えるまで何年も掛かります。最終結果を目標にしてしまうと、中間段階でこの取り組みがうまくいっているのか、いっていないのかも評価できません。

活動を継続的に改善、発展させていくには、道標となる目標や指標、状態を決めておくことが重要です。これらは、その時の組織の状態や成熟度によって決めればよいのですが、これまで当社が支援してきた中では、下記のような指標を設定して取り組んでいます。

  • 新規アイデアを提出したスタッフやチームの数
  • 年間プロトタイプの作成数
  • 社外とのコラボ事例数
  • イノベーション教育への投資額
  • 新規商品/サービスと既存の割合

ちなみに、新規事業に対する明快な指標を持っている企業の代表例は、アメリカの世界的化学・電気素材メーカー3M社です。同社は、過去5年以内に発売した新製品が売上全体に占める割合を、30%にすることを目標化しています。2015年には32%に達しており、現在40%への成長を目指して取り組んでいます。

出典:3M 2016 Sustainability Report / 3M 2014 Sustainability Report
3M CEO: Research Is ‘Driving This Company’(CBNC U.S. News 10 Jun 2013)

ポイント3:メソッド・スキルを持つ(登るためのツールと技術を身につける)

立教大学の中原 淳教授らがとりまとめたレポート『「事業を創る人」の大研究』では、『新規事業がうまくいかない要因は?』という問いに対して、約半数の経営者が『能力ある従業員の不足』と回答したと紹介されています。

出典:「事業を創る人」の大研究 – クロスメディア・パブリッシング(2018年)

では、新規事業の能力とは何なのでしょうか?また、これまでその能力を育てるための取り組みや機会があったのでしょうか?

どんな新入社員であっても、3年もあれば一人前の営業に育てられるように、新規事業も大事に育てていくことができます。事業創出だからといって、何か特殊能力が必要なわけではありません。すべてのビジネスパーソンの必須のスキルとして、実践を通じて反復学習し、育成していくことが重要です。ちなみに、私たちの経験では、新規事業制度の参加回数が多い人ほど、最終提案の精度やレベルが高く、次のステップに進む傾向があります。

ポイント4:仕組みをつくる(ゴールに向かうための道筋を描く)

社内の新規事業提案制度は、新規事業を生み出す重要な施策のひとつです。しかしそれ以外にも、事業創出にはさまざまなアプローチがあります。

例えば、アイデアソンハッカソンやスタートアップとのオープンイノベーション、コーポレートベンチャーキャピタルとしての出資、M&Aや事業提携などです。アイデアや新規事業を生む出すための方法は、個人レベルから組織レベルまで多岐に渡ります。

豊富な手段の中から、どれを選ぶのか?また各施策が単発ではなく、有機的なつながりを持つにはどのようにすればよいのか?自社が定義したイノベーションの領域や方向性、設定した目標、組織の成熟度なども加味しながら、成果までの道筋を描き、運用方法や体制とセットで仕組みを検討していくことが重要です。

ポイント5:新規事業のカルチャーを醸成する(挑戦を楽しみ、応援する組織文化をつくる)

0から1のフェーズは究極に不確実な仕事です。合理的かつ客観的に考えれば、『生産性が低い』、『計画が立てられない』、『リスクが高い』など、やらない理由は無数に出てきます。

それだけでなくさらに、足下の数字をつくっている現業部門との軋轢や、上司の場当たり的な判断、必勝前提の過度な期待などのトラップもあちこちに潜んでいます。アイデアそのものは良くても、組織がこれまで培った慣習やしきたりが、新規事業の芽を摘んでしまいます。こればかりは、外部からの応急処置的な対策で、何とかなんとかなるものではありません。出島をつくって慣習や文化を断絶し、外の世界の叡智や最新技術だけをいいとこ取りしようとしても、本質的な変革は望めないのと同じです。

『どのようにすれば挑戦を楽しむ、応援する組織文化を創ることができだろうか?』という問いに、真正面から向き合い本気で取り組むことを避けては、事業創出へとつながるイノベーティブな組織への変革はありえないでしょう。

 

皆さんの組織では、自社の新規事業の創出活動をどのように評価していますか?

新規事業は一過性の取り組みではなく、組織の中で反復し繰り返し実行することが求められます。bridgeでは、イノベーションが生まれる組織づくりをテーマに、これらの5つのポイントを踏まえた統合的な支援をしています。

ご興味があれば、ぜひお気軽にお声がけください。

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