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「社内起業家(イントラプレナー)」と聞くと、「ベンチャーを起こす人とは何が違うの?」と疑問に思うかもしれません。社内起業家は、すでにある企業の中で新しい事業を立ち上げ、組織全体に新しい価値や風を吹き込む役割を担う人たちです。
ただ、社内起業家の道は平坦ではありません。組織の慣習や既存事業を優先する空気が、新規事業のアイデアを阻むことだってあります。そんな中でも成果を出すためには、“ある能力”と“乗り越えるべき壁”の存在をしっかり理解しておくことが大切です。
社内起業家に必要なスキルは、大きくわけて「自分」「顧客」「会社」の3つの視点の交点にあるといわれています。具体的にいえば、
この3つがしっかり結びつくと、「自分が本気でやりたいこと」と「顧客が本当に求めているもの」と「会社が持っている強み」のすべてを繋げた新規事業が生まれやすくなります。逆に、どれか一つでも欠けると、事業がうまく前に進まなかったりします。
新規事業が失敗するときによく挙がるのが、「そもそもマーケットニーズがなかった」というケースです。言い換えれば、顧客は困っているのに、「あなたの解決策は要らないんですよね…」と言われてしまう状況。
ここを突破するには、顧客開発が必要不可欠です。
たとえ「困っています」と言われても、その先に「でも別にそれで解決しなくても大丈夫」という顧客の本音が隠れているかもしれません。その微妙な部分まで理解し、調整していくことで“欲しい!”と思われるサービスやプロダクトに仕上げていくわけです。
新規事業を大きくするには、社内のリソースや既存のネットワークをうまく使うことが欠かせません。しかし、現実には「よくわからない新しいことより、今のメイン事業を優先したい」という風潮が強い会社も少なくありません。
この壁を乗り越えるためには、「社内のみんなをワクワクさせるストーリー」を語れるかどうかが鍵になります。
ただお願いするだけでは動いてもらえないかもしれません。まずは自分自身が“ストーリーテラー”となって、仲間を巻き込む力が求められるんですね。
新しい事業を始めると、トラブルや予想外の問題が出てくるのは当たり前。そんなときに乗り越えるエネルギー源となるのが、**「自分が何としてでも解決したい!」**という強い想いです。
でも、「会社のプロジェクトだから…」とか「上から言われてやってるし…」というスタンスだと、なかなか本気にはなれませんよね。そこを克服するには、
そうやって五感で悩みを体験すると、「これはもうオレ(わたし)がやるしかない!」という当事者意識が自然と芽生えてくるんです。結局、この意識こそが行動を継続させる最強のエンジンになります。
これまで見てきた3つの壁は、どれも「やれば簡単に超えられる」ようなものではありません。だからこそ、大事なのが「何が何でも実現したい!」という強いパーパスです。社内外からの反対や無関心をはねのけるだけの情熱がなければ、途中で力尽きてしまうことも多いでしょう。
しかし、だからといって「孤独な戦い」というわけではありません。自分の熱量に火をつけて、それを社内や顧客に伝搬させることで、新しい事業には勢いがつきます。そして、そのプロセスを通じて自分自身も大きく成長していくのです。
社内起業家は、企業に新しい文化や価値観をもたらす可能性を秘めた存在です。3つの壁を乗り越えるたびに、より深い洞察と強い意思が育まれ、それが組織全体にポジティブな影響を及ぼします。もちろん、企業側も社内起業家をどう支援し、どう育成するかを真剣に考える必要があります。
もしあなたが「会社の中で新しいことをやってみたい!」と思うなら、まずはパーパス(目的意識)をしっかり持ち、顧客と会社をどう巻き込むかを考えてみるといいかもしれません。そうすることで、社内起業家としての第一歩を踏み出しやすくなるはずです。
LIFULL
リサーチの「民主化」というテーマを掲げた浜岡宏樹氏の挑戦は、まさに既存の価値観に風穴を開ける試みと言えるでしょう。LIFULL社内のビジネスコンテスト「SWITCH」で生まれた新規事業をもとに、浜岡氏は「ユニーリサーチ」を立ち上げ、独立という道を選びました。この取り組みの根底には、リサーチという領域を専門家だけのものではなく、誰もが活用できるツールへと変革するビジョンがあります。浜岡氏の歩みは、社内起業という枠組みが、企業の持つリソースを活用しながらも個人の自由を最大化する手段となり得ることを示しています。
ミズノ
「辞めずに起業する」という選択肢は、多くの人にとって一見矛盾するアイデアに映るかもしれません。しかし、ミズノ社員の清水雄一氏が実現した「出向起業」という形態は、その常識を覆すものでした。彼が設立した株式会社DIFF.は、左右の足のサイズが異なる人々のために、左右別サイズのシューズを提供するサービスを展開しています。ミズノの看板に頼らず、自己資金で起業するという清水氏の決断は、組織の内外に強い示唆を与えています。