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多くの人が気づいていない「デザイン思考の真の意義」とは?

2019.04.01

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デザイン思考とは?

「デザイン思考」という方法論は、人間の感情的なニーズや普遍的な欲求を起点に、課題解決や新たな価値を生み出すために用いるマインドセット(考え方や取り組み方)です。2000年代初頭から米スタンフォード大学を中心に、シリコンバレーの産学で有名になりました。今ではアメリカはもとより、世界の教育や産業界で広く応用されています。

デザイン思考は、日本でもここ数年ポピュラーになっています。イノベーションがなかなか生まれない日本企業の悩みを解決すべく、デザイン思考を学んで経営やマーケティングに取り入れる企業が増えています。今回は、このデザイン思考の活かし方や、価値創造について説明します。

デザイン思考は「魔法の杖」ではない

いくらお金をかけてデザイン思考を学び、新事業開発やマーケティングに応用しても、顕著な効果が出ないケースが少なくありません。そのため、デザイン思考にあまりよくない印象を持つ人もいます。

どんな方法論も同じですが、効果が及ぼす影響が大きいものであればあるほど、学んでから成果につなげるには時間が掛かります。特に、デザイン思考は、マインドセットに効果を及ぼすウェイトが大きいため、単に学べばうまくいくというものではありません。

デザイン思考のステップの後半では、トライして失敗し、失敗から学んで、素早く改善するサイクルを繰り返すことで、アウトプットの質を高めていくという考え方が強調されます。これはエンドレスに続くもの、続くべきものです(これは、当社に相談いただくお客様にも念入りに説明しています)。

一方で、デザイン思考の効果が実感されるケースも増えてきました。それは、デザイン思考を組織に取り入れることによる、人の働き方と組織の健全なあり方に及ぼす、ポジティブな効果です。

デザイン思考による理想的な組織文化の構築

私たちbridgeでは、企業の新規事業や新商品開発の支援、組織が抱えるさまざまな課題を解決するためのプロジェクトの支援をしています。多くのプロジェクトでデザイン思考のアプローチをベースに進めていきますが、数々のプロジェクトを支援してきた中で、デザイン思考が人と組織にもたらす影響を強く実感してきました。

デザイン思考で実プロジェクトを動かす際には、まず対象とする領域を絞り、「どうすれば物事がもっと良くなるだろうか?」という問いを立てるところから始まります。例えば、スティーブ・ジョブズが『どうすれば大量の音楽を、もっと手軽に楽しめるだろう?』という問いの元に、iPodというイノベーションが生まれたことはよく知られています。

対象とする領域を絞った後は、ユーザーを観察し、立てた問いの「確からしさ」の精度を上げていくことを繰り返します。アイデアを出しては、そのアイデアをユーザーに検証し、プロトタイプと検証を繰り返す過程で、アイデアの妥当性を高めていくというプロセスを繰り返します。

このプロセスを理解し、組織に定着させることで、イノベーションの種が複数生まれ、育っていく土壌が形成されていきます。

デザイン思考による価値創造に不可欠な2つの要素

企業において、その最たる成果として目指すのが、「新規事業による経営業績の向上」です。しかし、私たちが数々のプロジェクトに携わる中で、実はあまり注目されていない2つの要素に、デザイン思考の真髄があるという答えに辿り着きました。

それは、プロジェクトに関わる全員がその過程で身につけていく、新たな価値創造に及ぼす影響という側面です。

  1. 1.創造的活動
  2. 2.利他的思考

自己実現としての創造的な活動と、『誰かを幸せにしたい、痛みを軽減させてあげたい』という利他的な動機が、物事の生産性を高めるということはさまざまな研究で明らかになっています。これらは決して、相反する要素ではありません。事実、デザイン思考をベースとしたチームワークを進めていくと、チーム全員のマインドが自分から他人へ、やらされ感からワクワク感へ推移していく様子が明らかに見受けられます。

また、「創造的活動」の活性化と「利他的思考」の活性化が相互に影響し、互いにその効果を高めるということもわかってきました。自分の創造的活動によって、広く誰かの幸せを作り出すことの意義を感じ、そのモチベーションが高まることによって、さらに組織が創造的に進化していきます。

この「創造的活動」と「利他的思考」を増進させ、イノベーティブな企業文化を形成していくプロセスこそがデザイン思考の真髄です。その結果として、共創による新たな価値が生まれ、将来の事業の業績につながっていきます。

-マレーシアでの新規事業プロジェクト最終日の様子。『どうすれば、イスラム教徒の人たちの美と健康の課題を解決できるだろうか?』という問いを立て、約1ヶ月の間現地のバディとともに活動し、現地の人々への深い共感と理解のもとに、イノベーティブな新規事業が生まれた。-

デザイン思考アプローチはさまざまな部門で応用可能

デザイン思考は、経営企画や新規事業部部門など、経営に近い部門が、現状打破の目的で取り入れることが多く見られます。しかし実は、営業部門や社内の間接部門が、自社内外の現状のあり方を改善する際にも、効果を得られることが多くあります。企業文化の改革という意味では、間接部門が持つ影響力の方が強い場合も多々あります。

営業

顧客との接点や顧客が体験するサービスプロセスに、多くの改善の余地が残されていることがよくあります。特にBtoBビジネスの場合、顧客が自社の製品を知り、購入を検討し、使い続ける過程で多くの人が関わり、多くの課題解決に貢献できる余地があります。言い換えれば、これが新たな利益のポイントになることも少なくありません。

商品やサービスを売ることだけが目的になっているのならば、『どうすれば、顧客に価値を提供し続けられる、サービスプロセスを実現できるだろうか?』という問いを立てることができます。見落とされている顧客価値創造のポイントを見つけることで、複数の小さなイノベーションを起こせる可能性があります。

広報/マーケティング

社外へのPRを担う広報部門にも、デザイン思考的アプローチが応用できることが多くあります。例えば、『どうすれば、顧客に嫌悪感やストレスを与えずに、自社の魅力を知ってもらえる広告ができるだろう?』という問いを立ててみましょう。顧客の困りごとに目を向けてみたり、顧客がどのように企業の情報を得ているかを知ることで、現状の広告やPR、マーケティング戦略を見直し、効果を高めるためのブレイクスルーが見えてくるかもしれません。

人事

人と組織に影響力を持つ人事部門でも、デザイン思考を取り入れることで効果を見込める余地が大いにあるはずです。なぜなら前述の通り、デザイン思考は「人」を起点にした課題解決のアプローチであり、当然、組織は人によって成り立っているからです。

既存の業務プロセスや社内の制度、働き方を見直してみることで、働き方改革や生産性改善が実現します。これは、多くの企業が悩んでいる採用のためのブランディングや、社員のエンゲージメント向上にもつながります。

まずは身近なところから、小さな問いと共感を育てるデザイン思考

自分以外の誰かに貢献したいという利他的な動機が起点となり、その対象範囲が広ければ広いほど影響力は大きくなります。しかし、対象範囲が広ければ広いほどに難しいものになることも事実です。

まずは身近な人たちへの共感を起点に、小さなイノベーションを目指してみることをお奨めします。そのために、まずは社内の業務改善にデザイン思考を用いてみることも有用です。

今も多くの企業がデザイン思考でイノベーション創発を目指して取り組んでいます。しかしこれまで説明してきたように、そこに関わる人が創造的活動にワクワクできる環境が重要です。誰かを幸せにしたいという利他的なモチベーションを持ち続け、継続的に活動していくことが不可欠です。そのような文化を組織に定着させることに、デザイン思考は役立ちます。

「どうすれば、自社の業績を改善する新商品が生まれるだろうか?」
「どうすればもっと広く、人々が幸せになる価値を届けられるだろうか?」

新規事業や新しい取り組みを始める際に、そこに関わる人々がよりワクワクする問いはどちらでしょうか?もし後者なら、ぜひデザイン思考を取り入れてみてください。

written by 鈴木郁斗/株式会社bridge

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