CASE STUDY
課題
bridgeがしたこと
成果
今回は、「カルチャートランスフォーム」をテーマとして掲げ、イノベーションが生まれる環境づくりに向けて活動を続ける同社 フィールドサービス本部副本部長の生貝 繁信さんにお話を伺いました。
株式会社アドバンテスト
フィールドサービス本部 副本部長
生貝 繁信 さん
株式会社アドバンテストは、半導体・部品テストシステムの大手メーカーです。「先端技術を先端で支える」を経営理念に、市場の第一線で半導体のテストソリューション製品やサービスを展開する企業です。
現代の産業を支える「シリコンマーケット」は、グローバル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速によって、定期・不定期に大きく変動する、いわゆるVUCA(ブーカ)市場です。激動するビジネス環境に対応するには、同社も大胆な組織変革が急務でした。
フィールドサービス部門は、テスト機器など、お客様に商品を販売した後のメンテナンス、および装置の保守・保全を事業の中心にしている部門です。直接、お客様のところに赴いて、装置の修理・点検などを作業しています。
当社は半導体試験装置を販売していますが、事業としては変動の大きいマーケットの中にいます。その理由は、技術革新に伴う「シリコンサイクル」と呼ばれる周期が、4年置きに上昇・下降を繰り返すからです。当社はその影響を直接受けるため、コア事業の一つである「メモリーテスター」と呼ばれる装置の売り上げが大きく左右されてしまいます。
市場がダイナミックに動くため、近年よくいわれる、VUCA(ブーカ:Volatility 変動性、Uncertainty 不確実性、Complexity 複雑性、Ambiguity 曖昧性)のキーワードを、そのまま体現した企業でもあるんですね。そういった、いろいろな変化に富んだ状況の中でも、従業員一人ひとりがその変化を乗り越えていけるように成長することが、組織にとって非常に大事だと考えていました。そう考えていたにもかかわらず、実際には、その成長のための環境づくりが十分にできていませんでした。
そこで今回、保守・保全という従来のビジネスモデルからソリューション型のモデルへと、サービスを変革していこうと考えました。つまり、『モノからコトへ』のシフトです。今までのメンテナンスの領域だと、お客様からすると我々は単なる「ベンダー」でしかありませんでした。ですが、サービス変革を通してお客様の「パートナー」となり、従業員一人ひとりのモチベーションを高く維持することが、成長の環境づくりにつながるのではないかと思ったんです。
そんなきっかけから「カルチャートランスフォーム」に取り組むことをテーマに、2019年の春にイノベーションチームを結成しました。そういった背景があり、bridgeさんに伴走者として付き添ってもらうことで、組織変革のスピードを上げたいという想いがありました。
はい。まず、事前にいろいろなセミナーや外部のお話を聞く中で「起承転結モデル」を知りました。そこで、当社に起承転結モデルを当てはめてみた時に、一体どうなるんだろうと思ったんです。結論をいうと、「起」のフェーズが弱いということに気がつきました。つまり「起」で0→1を作る人、イノベーターのことです。
1ができたら、次は乗数としてn倍、100倍していく「承」の人がいます。そして「転結」として、物作りや開発を通して、その仕組みをぐるぐる回す人が必要です。
ということを考えると、やはり我々のような物作りが得意な日本企業は、どうしても「転結」に寄って、作ったモノの仕組みを回すのは非常に得意です。ただ0→1にする人材を見つけて育てていくのは、なかなか難しい。そこで、イノベーションチームを作った際に、「アウトサイドイン」というテーマを掲げました。要は、『ないものは外部から取り入れる』というマインドセットですね。そういったオープンイノベーションの取り組みを通して、外部から「起」の部分を得るという姿勢を大事にしたいと思っていました。
チームビルディングを進めるにあたり、達成すべき目標としていたテーマは主に3つありました。先ほどの「カルチャートランスフォーム」、ビジネスの効率を上げる「エフィシェンシーゲイン」、そして、お客様がびっくりするような新しいサービスを作ってビジネスグロースにつなげる「サプライジングサービス」でした。
これら3つのテーマのうち、後ろ2つの「エフィシェンシーゲイン」と「サプライジングサービス」は、副次的に後から付いてくるものです。一方、最初の「カルチャートランスフォーム」は、人を中心とした設計の話なので、一番重い課題だったんですよね。カルチャーは、『人の気持ちが変わり、人の意識が変わっていくことで、人の行動が変わる』ということがポイントです。やはり、『チームビルディングからやらないと立ちいかないだろう』と思っていました。
『モノからコトへ』の変革というのは、誰か素晴らしい天才がいきなりやって来て、サービスを展開するということではありません。チームの中から湧き上がってくるエネルギーだとか、アイデアだったり、チームワークを形成しないといけないですよね。なので、人にフォーカスした活動にすることで、変革を促せないかと考えていました。
はい、そうです。というのも当社の顧客層は、約95%が海外のお客様なんですね。我々は、北米、欧州、アジアほか世界各地に拠点構えています。なので、日本企業ですけども国内だけに留まらず、最終的には世界を相手にしていかなきゃいけないんです。
ただ日本が本社でもあることから、日本が一番頼りにされている部分があります。であれば、やっぱり日本から変わっていく必要があると思うんです。
日本人のメンタリティを考えると、リーダーシップを取ってグローバルな組織を引っ張っていこうっていうのは、かなり難しい課題だとも思います。それでも、まずは日本がモデルケースとなって、そこから世界に「インサイドアウト」していくのが、今後海外に展開していく際のポイントになると考えています。そういった意図で、グローバルレベルで活動していました。
今回のプログラムを通して、各チームが「3年後の自分たちがありたい姿」を描きました。マネージメント層全員が出席して、一人も欠席することなく、数回に分けて全員で実施することができました。そこから、今、9つぐらいのテーマでアジェンダが上がってきて、そのフォローアップが今も続いている状態です。会社としても、中長期経営方針の中でこの先のビジョンを、『進化する半導体バリューチェーンの中で顧客価値を追求』と明文化しています。
全社的な活動として大きいビジョンがあり、そして我々がそれぞれのチームで考えたビジョンも明確になりました。次は、『そこにつなげていくために、これから我々は何をしていくべきなのか?』を考えるのが、今後の課題かと捉えています。
大きなビジョンをもっとブレイクダウンすれば、一般従業員の人たちが担当するビジョンやミッションを描きやすくなります。さらに、実行していくフェーズにまで落ちてくると、全体が会社のやりたいこと、チームがやりたいこと、個人がやりたいこと、それぞれがリンクしてくるはずなので、そこに取り組んでいきたいです。フィールドサービス部門の範疇で始めたんですけど、これが当社全体に広がっていくのが、2020年に期待される目標ですね。
いつものチーム、いつもの職場で仕事をするのが日常です。そこで、冒頭でお話しした「アウトサイドイン」として、新しい目線や観点といった、単にフレームワークを教えてくれる会社は数多あるかと思います。
ただbridgeさんの場合は、「伴走者」として寄り添ってもらいながら、『御社は何を求めているんですか?』っていうクエスチョンをし続けてくれました。今もこうして、インタビューを通して我々から聞き取ってもらい、それをカスタマイズして還元していただけるのは、本当にありがたいと思っています。
今回のプロジェクトを通して御社には、フレームワークも使いながら我々の課題に沿ったプロジェクトをデザインし、サービスの変革のためのトリガーをかけていただけたと、感じています。