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デザインフィクション思考で描く、リコーの社会インフラ事業と2036年の未来図

デザインフィクション思考で描く、リコーの社会インフラ事業と2036年の未来図

課題

変化が激しく将来の予測が困難な時代において、一つの固定されたシナリオに固執することに課題意識を持っていた

bridgeがしたこと

デザインフィクション思考で描く2036年の未来図

成果

「望ましくないが起こり得る未来シナリオ」を探索。未来からのバックキャスティングで事業作りに必要な要素をいくつも手に入れた

株式会社リコー|リコーフューチャーズBU長入佐孝宏様

株式会社リコー リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント 入佐 孝宏 さん(中央)、株式会社bridge ビジネスデザイナー 鬼海 翔(左)、株式会社bridge クリエイティブ・ディレクター 村上 雄紀(右)

 

事業を生み出す手法の一つとして、「デザインフィクション思考」が注目を浴びている。

民間の宇宙関連企業「スペースX」を創業した、イーロン・マスク氏も採用した手法ということで、新規事業開発に携わる者であれば一度は聞いたことがあるはずだ。デジタル技術の分野であれば、KindleAmazon Echo なども、デザインフィクションの事例として挙げることができる。
(参考:http://blog.ricoh.co.jp/RISB/society/post_646.html

この思考法は、「未来になっても何も変わらないだろう」という考えを見直してもらうために活用する物語的プロトタイプである。提唱者のブルース・スターリング氏はそう定義した。

「デザイン思考」が顧客の観察から気づきを得たありたい未来を起点とすることに対し、「デザインフィクション思考」は現時点の想定をはるかに超えた望ましくないが起こりうる未来を予測し、それを起点に逆算(バックキャスト)することで気づきを得る方法だ。すでにアメリカをはじめ、日本国内でも注目を集め始めている。

そんな中、複合機の圧倒的シェアを誇る「リコー」が、デザインフィクション思考を用いた新たな取り組みを実施した。

リコーはこれまでの製品軸による組織の在り方を見直すため、事業ドメインの再定義を図る「カンパニー制」を20214月に導入。5つのビジネスユニットとグループ本社に組織体制を刷新し、各ビジネスユニットが開発から生産、販売までを一貫して行う体制を作り上げた。

その内の一つ、社会課題を解決する新規事業創出を担う「リコーフューチャーズ」によって、デザインフィクション思考は採用されたのだ。

https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/events/2020/pdf/r02q2_1.pdf

今回お話を伺うのは、「リコーフューチャーズビジネスユニット」のプレジデント、入佐孝宏氏だ。

コロナ禍のオフィス環境の変化により、コピー機の価値が相対的に下がってしまった。このような事態は、不確実性の高い世の中である以上、これからも何度も訪れるかもしれない。その時に、社員一人ひとりが絶えず環境の変化を捉え、事業を発想できなければ再び大きな壁にぶつかるかもしれない。

そういった想いが、「デザインフィクション思考」の導入に踏み切った背景にあるそうだ。

bridgeではこの度、3日間のワークショップ(以下、WS)をオンラインで提供。望ましくないが起こりうる未来を考えるプロセスを通し、「リコーフューチャーズ」のメンバーは、いくつもの新たな発想と気づきを得たという。

bridge提案「デザインフィクションWS」WSには、現役SF作家・津久井五月氏も招き、物語やキャラクターを描くことで、より解像度の高い取り組みへと発展させることができた。

津久井氏といえば、「WIRED Sci-Fi(サイファイ)プロトタイピング研究所」とサイバーエージェントが行ったSFプロトタイピングの取り組みに参画したことでも知られている。 

今回の取り組みについても、次のようなコメントをいただくことができた。

50年以上かけて洗練されてきたシナリオプランニングとは違い、デザインフィクション思考には、ある種のバカバカしさや子どもっぽさがあります。だからこそ今回のWSには、大きな意義があったと感じました。やってはいけない、しなくてはならない……といった、あらゆる制約を取っ払い、固まりきったコンテキストを外し、思いつくことを何でも発言できる環境にすることで、延長線上の未来にはない新たな発想が生み出せたように思えます」

果たしてbridgeの提案した「デザインフィクションWS」はどのように機能し、実際にどのような成果をリコーフューチャーズにもたらしたのか?

実際のWSの内容を振り返りながら、改めて3日間の取り組みについてインタビューした。

社会起点の事業を生む「デザインフィクション思考」

株式会社リコー|入佐 孝宏さん

入佐さん(以下、入佐):総括としては、非常に素晴らしい内容でした。リコーはこれまでデザイナーや新規事業に携わる人間に対しては一定の教育環境を用意してきたため、「デザイン思考」には自信を持っていたのです。

しかし「デザインフィクション思考」となると、また勝手が違ってきます。社内では、望ましくないが起こりうる未来いわゆるディストピアを、どのようなインプットを与え、どのようにファシリテーションをすれば描けるのかという部分にハードルを感じていました。

今回は非常に企画もよかったと思います。まさか富士山の噴火と地震、津波が一緒に起こる事態や、VRの仮想世界で人が生きていく環境など、従来の手法では描けなかった未来構想からのバックキャスティングができました。そのプロセスから生まれた気づきや発想も、非常に貴重なものになったと考えています。

一方で、準備期間を含め正味1ヶ月、WS自体は3日間という短い時間で、しかもオンラインでの実施だったことに最初は不安もありました。リコーの社員はとてもマジメな性格で、内弁慶なところもあるので、打ち解けるのに時間がかかるのではと心配もあったのです。

ところが「Microsoft Teams ミーティング」に加え、ご提案いただいたオンラインホワイトボード「Miro」を上手に使いながら、まるで同じ部屋にいるかのような感覚でインタラクティブなコミュニケーションが生まれるやり方。リアリティのあるクリエーションが誕生し、理屈なしに「オンラインでここまでできるのか!」と大きな学びがありましたね。

未来予測書籍

「未来予測カード」を使ったワークなどを3日間で行った

-Q 改めて今回、デザインフィクション思考を取り入れた背景には何があったのでしょうか?

入佐:リコーは現在、既存事業の延長とは異なる、新たな価値を作ることがテーマになっています。先が見えない世界環境で、永続的な事業をどのように生み出すか。そのために今年の4月から「カンパニー制」も導入したわけです。しかしそれによって、社内に戸惑いも生まれました。

トップラインが伸びていると、やるべきことはクリアになります。機能ごとに組織を作り、与えられたことを着実にこなせば成果が出る。このやり方で20年やってきたわけです。

これまで目標は「与えられるもの」だった。それが新制度の導入により、今度は白いキャンバスを渡すから自分たちで自由に描きましょう、ということに。目標は「自分たちで作るもの」になったのです。

そこで目標設定のヒントとして「デザインフィクション思考」を検討しました。社内には、リコー経済社会研究所という研究機関があり定期的に報告会が行われます。そこで今年の1月に一つの論文が報告されました。「デザインフィクションで型破りな構想=イーロン・マスク氏も実践する未来予測=」というタイトルです。

これまで我々企業は、人間がより快適で便利になる製品を生み出してきたわけですが、その結果として地球の環境破壊を促してしまった。ということは、これから私たちは人間を起点にするのではなく、社会を起点に事業を発想する必要があるのではと考えたのです。

その発想ツールとして「デザインフィクション思考」が有効だと感じました。

株式会社リコー|株式会社リコー|入佐 孝宏さん-Q bridgeをプロジェクトパートナーに選んだ理由を教えていただけますか?

入佐:「デザイン思考」に明るい社内の人間も、ディストピアからバックキャスティングするやり方にはハードルの高さを感じていました。その時点で外部の力を借りる必要性は感じていたのです。

では、誰に頼めばいいか? という部分でインターネット検索にヒットしたのがbridgeさんでした。「SFプロトタイプ」に関する記事も執筆しており、専門性の高さや造詣の深さを感じました。また、実際のご提案内容も弊社の目指すことそのものだったのも大きな理由です。

リコーフューチャーズには8つの新規事業候補があり、それらの育成ポリシーとして、コラボレーションというキーワードがあります。まずは自社で強みや競争力を持ち、共創したいと名乗りをあげてくれた企業とオープンイノベーションをしていく。

2050年のカーボンニュートラルもそうですが、その実現を一企業だけで成し得ることはできないと思っています。しかし、小さくても一企業の取り組みがやがてうねりを生み出し、世の中を大きく動かすことには貢献できるかもしれない。

そういった物語を語り、ストーリーテリングによって社会を巻き込む必要がある中で、bridgeさんの提案はまさに最適なWSの内容だったのです。

リコーの次なる課題「プランニングから実行へ」

株式会社リコー|入佐 孝宏さん-Q WSで得られた手応えをベースに、今後はどんな展開を考えていますか?

入佐:今後の動きについては「プランニングではなく実行」の一点に尽きる、そう考えています。企画を資料にしてプレゼンすることにリコーの社員は長けていて、シナリオからのバックキャストもストーリーテリングもできている。だったら次の一歩、「実行」をしていこうよという、リーダーシップが次の課題になります。

今回のWSを取り入れた背景とも重なりますが、リコーは2036年(創立100周年)を迎える15年後に向けて、新しい価値を生み出す企業になるべくして全社員で動いています。その中でリコーフューチャーズの役割は、時間軸の異なる仕事を通じて、今ではなく未来の価値を作ること。

今日と5年後と10年後で、社会課題は変わり続けます。人々のはたらくに寄り添い、社会課題を解き続ける企業として永続性を持たせていく。そのためには、デザインフィクション思考を使い倒して、組織として強くなること、プランニングだけでなく、個々人が自分事として受け止め、実行することが求められます。

5%なのか3%なのかもわからない低い確率、しかし起こり得るディストピア(起きてほしくない未来)に向けて踏み出そう、仲間を作ろうとストーリーテリングできる。そうなれば、非常にユニークな会社になれるのではと考えています。

-Q リーダーシップの課題解決に向け、どんな働きかけを考えていますか?

入佐:人財が育ち価値作りに社員全員が邁進し、生きがいを感じられる状態を目指したいと考えています。そのためには社員の適性に合う仕事を与えるのではなく、機会を自分で取りにきてもらえるようにする。そのほうがわかりやすく、シンプルです。

上層部は余計なことを言わず、みなが自由に意見できる環境を作る。主体的に動ける状況が整えば、おのずとリーダーシップの課題も解決できるはずです。

不安もありますし、リスクも発生しますが、失敗したら授業料として受け止める。私自身、そういった働き方をさせてもらえたからこそ成長できた経験が過去にあります。次は私が環境を整える番。上司の役割ですね。その時はまた、bridgeさんとの新たな取り組みができたら嬉しいと思っています。

今回のプロジェクトを通して、bridgeさんには「プロトタイピング」の専門家も在籍していると知ることができましたので、ぜひ次回も違う形でリコーのこれからを後押ししていただければ幸いです。

株式会社リコー|オンラインインタビュー

インタビューはオンラインも活用した同時取材だった。画面左下:リコー 山田公城さん(左下)、リコー 倉林智子さん(右下) SF作家 津久井五月さん(中央左)、今回のWSの設計を担当した、プロトタイピング専門家 三冨敬太さん(中央右)。

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