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欧州におけるソーシャルイノベーション(海外事業開発プロジェクトin ロンドン/UK 活動レポート)

欧州におけるソーシャルイノベーション(海外事業開発プロジェクトin ロンドン/UK 活動レポート)

今回は、「ソーシャルイノベーション」をテーマとした新事業開発プロジェクトの活動をご紹介します。大手家電機器メーカーM社の若手メンバーを対象に、約5ヶ月に渡って開催したプロジェクトで、bridgeビジネスデザイナーの鈴木 郁斗が代表を務める(株)メルサ・インターナショナル・ジャパンが、メンターとしてメンバーを支援しました。

昨今、多くの企業の経営指針として扱われる、SDGs(Sustainable Development Goals)。 持続可能な社会を目指して、国家や企業、民間が参画し、2030年までに達成すべき国連主導の開発目標として、いろいろなところで見聞きするようになりました。
従来、企業においては、社内規範や社内規範と共に、CSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)を含んだコンプライアンス(法令遵守)が重要視されてきました。さらに、消費者や取引先、地域社会など各ステークホルダーとの関係も含む、CSV(Creating Shared Value 経済的価値と社会的価値の同時実現)を目指す事業戦略が、企業のガバナンスや大きな経営課題になっています。

日本の企業にとっては、縮小していく国内マーケットから海外に視野を広げ、文化や価値観が違う異国において、CSVを実現する事業を創造していくことは、海外との取引が発生するほぼ全ての組織に不可欠です。

なお、各活動内容の紹介と合わせて、気をつけるべきポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

海外事業開発プロジェクトin ロンドン/UK 活動レポート

活動の経緯

このプロジェクトでは、ソーシャルイノベーション(革新的な方法による社会問題の解決)をテーマに、約5ヶ月間に渡って以下のような活動に取り組みました。この記事では、項目ごとに各活動の経緯をご紹介します。

  1. 1.プロジェクトチームの編成と事前学習
  2. 2.事業機会の発見
     1デスクリサーチと仮説立案
     2現地でのフィールドリサーチ
  3. 3.情報整理(情報の概念化)
  4. 4.アイデア創発と仮説検証
  5. 5.ビジネスモデルデザイン
  6. 6.次のステップに向けて

1. プロジェクトチームの編成と事前学習

より高い成果を実現するために、M社は全社の各事業部から立候補者を募集しました。基礎学習の機会を設け、自社の新規事業開発に関する論文の提出やプレゼンテーションを経て、基礎英語力や創造的活動に対する意欲のなどの観点から、精鋭メンバー6名を選抜しました。
メンバーは、総務と経理、エンジニア、営業と、異色の人員で構成されました。普段関わりのなかった新事業開発という領域で、それぞれの専門的知識や多面的視点を生かした、多様性のあるチームを編成しました。

事前学習では、今回の活動に必要な知識とマインドセットを醸成していきました。ヨーロッパ経済に関するマクロ視点での基礎学習と、デザイン思考によるユーザー視点の価値創造プロセスの概要、いくつかのフレームワークを使ったイノベーション創発のためのワークショップを実施しました。

2. 事業機会の発見

1 デスクリサーチと仮説立案

現地でのフィールドリサーチを効率的に実施するために、事前に取り組む事業領域のスコープと、現地の生活者が抱える課題の仮説を絞り込んでいきました。
今回のテーマであるソーシャルイノベーションに関連する現地の社会課題について、文献やインターネット記事からいくつかの視点でスコープを定めることから始まりました。

なお、テーマとスコープを定める上で、以下のようなルールを設定しました。

  • 自社の既存技術や資源、事業理念や方向性との関連がある
  • 社会課題に関連する (貧困や飢餓、健康など、SDGsの17項目のいずれかに該当する)
  • 自身が課題意識/所有感を持てる

当初は、大気汚染やゴミ、健康、廃油処理、飲料水、菜食主義者の食、プラスチックの廃棄など、いくつかの領域に着眼してスタートしました。どのような未解決の社会課題が存在するか?それに対して、自分たちがどのようなアプローチで解決できる可能性があるか?個別リサーチとチームでのディスカッション、私たちメンターとのオンライングループでの情報共有や意見交換を繰り返し、より精度の高い仮説に絞り込んでいきました。

最終的には、リーンキャンバスを用いていくつかの課題の仮説とそれらに対する暫定的なソリューションアイデアをセットで用意し、現地での活動に備えました。

デスクリサーチのポイント

デスクリサーチ(文献調査)は、統計データや公開資料、出版物など、過去の情報を抽出して体系的にまとめる調査方法です。その課題が本当に存在しているのか、どれくらいの緊急性(市場可能性)があるのか、すでに同じような課題にフォーカスして解決策を提供している競合がないか、もしあれば、競合がカバーしていない領域はどこか?自分たちの立ち位置をリサーチしておくことで、より効率的に現地で活動できるようになります。

2 現地でのフィールドリサーチ

2つのチームに分かれ、最終的に絞り込まれた健康問題、水問題、廃油処理の問題にフォーカスしたフィールドリサーチを実施しました。

インタビュー

まず、それぞれのテーマについて、対象となるユーザー層へのユーザーインタビューを実施しました。
インタビューは、下記の4種類をランダムに複数回実施しました。

  • クイック・サーベイ:あらかじめ仮説として用意した課題と、それに対するラフな解決のアイデアを基に仮説を検証する。
  • デプス・インタビュー:テーマに関して、対象属性の現地生活者を深く知ることで、潜在的なニーズを探る。
  • フォーカス・グループ・インタビュー:対象属性の現地生活者を複数名集めてインタビューを実施し、カジュアルなディスカッションの中から潜在ニーズを探る。
  • エキスパート・インタビュー:テーマに関する領域に詳しい専門家から、専門的な視点での情報を得る。


まず、クイック・サーベイで、あらかじめ用意しておいた、現地の人が抱えている(だろう)課題の仮説と、ラフな解決のアイデアをセットで提示して、反応を探り、さまざまなフィードバックを得ました。その中で『その課題ならすでにこの方法や製品で解決しているよ』とか、『その課題は確かにあるけど、お金を払ってまで解決しようとは思っていないかな』など、よりリアルな生活者の考えを知ることができました。また、改善のためのアイデアや、『いくらなら買う』といった適切な価格についてもアイデアを得られました。

デプス・インタビューやグループ・インタビューでは、対象となるユーザーへのさまざまな質問から深層ニーズを探っていきました。ここでは、対象となる製品やそれに関連する行動(例:携帯電話であれば、使っている機種の性能や普段の使い方など)だけではなく、その作業をする上での困りごとや些細な不満、さらには、対象ユーザーの生活習慣や日常の行動、価値観など、幅広い視点で共感を深めていきました。

さらに今回は、取り扱うテーマに関して専門的な知見を持つ、大学研究者やエンジニアなどへのエキスパート・インタビューも実施しました。解決すべき課題や解決のアイデアに対して、フィードバックや知識、情報を短期間で収集できました。

大きな組織の場合、社内にいるエキスパートを頼れるメリットがあります。今回は、他事業他部門を持つ社内ネットワークを活用し、考えているアイデアの実現性について、技術部や知財部の方からアドバイスをもらうことができました。いろいろな方の協力のおかげで、発案とフィードバックの効率的なサイクルを実現できました。

オブザービング(行動観察)

フィールドでは、インタビューの他に、着目しているテーマや課題に関連する対象ユーザーがいる場所へ足を運び、行動を観察しました。
インタビューにも共通しますが、未知の環境でオブザービングを実施する場合は、些細なことにも好奇心を持つことが大切です。『なぜこれはこうなっているのだろう?』『なぜこのような行動をしているのだろう?』といった問いを持ち続け、追求していくことがとても重要です。

今回、「低所得者層の肥満問題」に着目したチームは、あらかじめ調査した低所得者層の多いエリアのスーパーマーケットに出向いて、人々の行動を観察しました。どのような人が(Who)、どのようなものを(What)、どのように買っているのか(How)を観察し、特徴的な行動をしていた人に声を掛け、インタビューさせてもらうことを繰り返す中で、さまざまな発見や洞察を得ることができました。インサイトの詳細は後半でご紹介しています。

フィールドリサーチ

私たちが実施する、海外での新規事業開発活動の事業機会を発見するためのフェーズでは、「フィールドビジット」(エスノグラフィーとも呼ばれる)を並行して実施することもあります。現地協力者の普段の生活や行動に同行させてもらったり、職場や住居に伺って普段の行動を実際に見せてもらうことで、本人すらも気づいていない潜在的ニーズを探索するためです。

今回は、飲料水のテーマに関連する対象ユーザーの一般家庭を訪問させていただきました。主に、水にまつわる周辺領域(料理や食器洗い、入浴など)にフォーカスした、実際の生活の様子を観察させてもらいました。現地の生活者のリアルな生活現場に入り込むことで、解決のアイデアを出すための有力な素材を得られることも少なくありません。フォーカスした課題を取り巻く環境や、一連の行動やその周辺領域に関すること以外に、リサーチ対象者のさまざまな背景を垣間見ることもでき、些細な事象から意外な発見に至ることもあります。

例えば、今回訪問したあるお宅では、極度な硬水に含まれる石灰によってできる水垢を除去するために、独自の手法で工夫して対策している、特徴的な事象を発見することができました。また、一週間の食事のメニュー表を詳細に書き出していたり、整頓された梱包物に小まめなメモが書かれている様子などから、この対象者の性格や価値観も知ることができました。結果的に『神経質なまでに小まめで綺麗好きな主婦が、手軽に水垢問題を解消できる方法はないだろうか?』という問いを立てることができました(ただし、この段階でもあくまで仮説にすぎません)。

このように、一般論やインタビューでの回答だけでは知ることができない、本人さえも自覚していない特徴的な行動や発言を得られました。新商品や新事業開発の対象となるユーザーのペルソナを描く上で、重要な情報を得ることができるのも、フィールドリサーチの醍醐味です。

また、テーブルを囲んだ談話の中で、夫婦の役割分担についてお話を伺い、日本とは違う“主婦”という文脈の違いについて知ることができたことも重要な気づきを得る機会になりました。

フィールドリサーチのポイント

現地での一次情報を得ることは、未解決の課題を発見し、洞察を経て上質なアイデアをアウトプットに導く上で、非常に有用な手段です。今回ご紹介した、インタビューやオブザービング、フィールドビジットなどのフィールドリサーチは「文脈探索」とも呼ばれます。制約のない探索的なリサーチを通して、対象ユーザーの発言や行動、対象ユーザーを取り巻くさまざまな背景を幅広く観察し、いろいろな文脈の中から洞察を得ることが可能です。

一方で、自由度が高まり、情報が増えれば増えるほど、収束が難しくなり、情報に溺れて混乱してしまうことも少なくありません。フィールドリサーチでは、幅広い視点で文脈探索を広げながらも、限られた期間に優れたインサイト(洞察)を得るために、『そもそも何を明らかにするためのリサーチなのか?』という基本的な軸から外れないよう、常に意識しておくことが重要です。特に、今回のように慣れない言語で効率的にリサーチをする場合には、この部分の設計が特に重要です。

また、フィールドリサーチでは、表面的な回答で短絡的に結論を出そうとせず、さらに一歩踏み込んで深い質問や観察を経ることで、より質の高いインサイトに導いていくことが可能です。その際に、協力者が極力リラックスして本音を打ち明けてくれたり、普段の行動を気軽に見せてくれる環境と関係性を構築することがとても重要です。聞いていないことまでどんどん話してくれるたり、見せてくれるという信頼関係を作れるかどうかが、腕の見せ所です。

インタビューでは、一つ一つの言動をしっかりと記録できるよう、メモは必須。その際に、事実(対象者の実際の発言や行動)と解釈(事実を踏まえて自分が感じたや思ったこと)を明確に分けてメモを取ることで、後からの情報整理が効率的になります。可能であれば、動画や写真もできるだけ多く残しておきましょう。

3. 情報整理(情報の概念化)

ロンドンでのフィールドリサーチもいよいよ後半。この頃にはすでに、デスクリサーチや国内での議論だけでは到底得られない有用な一次情報を多く獲得し、より上質なアウトプットを実現させるための素材を、多く収集することができていました。

ここからは、フィールドリサーチで得たたくさんの断片的な情報を整理し、イノベーションを実現するために重要なインサイト(洞察)に結びつけるために、情報の概念化へと進みます。

情報整理のフェーズでは、それまでに実施したインタビューや行動観察を記録したメモの内容を付箋に書き出し、KJ法などの手法を用いて、概念化していくプロセスを辿ります。フィールドリサーチで見聞きしたさまざまな事象を整理していく中で、全く違う場面や場所、人の発言・行動などの事象同士が、共通点や相関性を持っていることに気づくことがあります。また、実際にリサーチ対象者が取っている行動と発言に、矛盾が見えるようなこともしばしばありますが、この矛盾の中に、対象ユーザーの言語化されていない潜在ニーズを知るための、手がかりを発見できることがあります。

例えば今回、「低所得者層の肥満問題」に着目したチームが現地のスーパーマーケットで実施した行動観察では、レトルト食品やスナック菓子を買っている多くの主婦にインタビューした際に、多くの対象者が『いつもは料理しているけど、今日はたまたま』という発言をしていた矛盾点に着目しました。そこから、『時間の問題や経済的な問題で料理ができず、つい体に悪いレトルト食品やスナック菓子を買ってしまい、悪い習慣から抜け出せないことへの罪悪感』という、言語化されない情緒的な悩みを抱えているのではないか?という洞察に至ることができました。

これを追求していくことで、『どのようにすれば、手間を省いて手軽に食べられる、健康に良い食品を提供することができるだろうか?』といった、良質なソリューションアイデアに至る問いを立てることができます。

情報整理のポイント

前述のスーパーマーケットでのインタビューのように、人は得てして『本音を語らない』ことが多々あるという特性を念頭に置くことは重要です。いかに違和感や矛盾点に気づき、言語化されていない深層心理を読み解いていくかが、良いインサイトを得るための重要な技量です。

フィールドリサーチでは、自分自身が持つバイアス(固定観念)を一切取り去り、5歳児のような好奇心を持って新鮮な心で対象ユーザーを知り、共感していくことが重要なポイントです。

インサイトにたどり着くまでの情報整理のフェーズでは、自分の固定概念に縛られ、あらかじめ持った仮説を立証するための都合の良い情報だけを抽出してしまう「確証バイアス」の状態に陥る、心理的な弊害が生じることが多々あります。自分の仮説が正しいことを証明するための「立証」が目的ではなく、常に、自分が立てた仮説は間違っている可能性があるという、「反証」を前提とした考え方を常に持っておきましょう。

4. アイデア創発と仮説検証

フィールドリサーチからインサイトを得たら、ここからは対象ユーザーの潜在課題に対する解決のアイデアを描き、プロトタイプによる仮説検証と改善を繰り返すフェーズに移っていきます。今回のプロジェクトでは、最終的に以下のようなアイデアにたどり着きました。

  • 水問題:硬水に含まれる石灰成分による、美容や健康への悪影響を軽減するための浄水プロダクト
  • 健康問題:自転車利用者が増えない原因となっている、サイクリストの安全の問題を解消するプロダクト
  • ゴミ問題と油問題:廃棄された紙と使用後の紅茶茶葉で、再生紙を生成するプロダクト

プロトタイプの段階では、時間を掛けてアイデアを精緻化したり、詳細な機能や仕様を考える必要はありません。発見した課題を解決できそうなアイデアをコンセプトレベルで伝えられる、アウトプットを素早く形成することが重要です。

アイデアをわかりやすく可視化し、仮説を検証するために用いるプロトタイプにはさまざまな手法があります。今回は、課題に対するアイデアをパッと見て評価できる絵や、そのサービスの利用シーンとプロセスを簡易的に描いた「ストーリーボード」という手法を用いました。

仮説検証では、対象ユーザーにプロトタイプや利用シーンをイメージできるアウトプットを見せながら、主に以下の4つの点を中心に、対象ユーザーからのフィードバックをもらいます。
(1)良いところ (2)改善してほしいところ (3)質問や疑問 (4)追加アイデア

「仮説検証型インタビュー」は、フィールドリサーチで実施する「機会探索型インタビュー」よりも目的が明確で、比較的容易に進めることができますが、この際にも対象ユーザーの深層心理を発見するチャンスがあります。淡々とした一問一答に終始させないことはもちろん、単純にフィードバックをもらうだけではなく、インタビュー対象者も自ら楽しんで発案に参加してくれるようなインタビューの場、無意識のうちに共創関係を構築することができれば、活動がより有意義なものになります。

今回は、現地でインタビューに協力してくれた方々と連絡を取り合い、ソーシャルネットワークで情報を提供してもらったり、アドバイスをくれたりしたことで、より効率的にアイデアのブラッシュアップができました。このような、ユーザーをも巻き込んだ共創関係が構築されていくことも、新事業開発プロジェクトの楽しさでもあります。

アイデア創発と仮説検証のポイント

仮説検証を実施する対象は、当然ながらその課題を持つユーザーとして定義した属性の人が対象です。一般論ではなく、あくまで『その対象ユーザーがどう感じるか?』に視点を置いて検証します。

せっかくターゲットユーザーを定義していても、まったく違う属性の人に仮説検証を実施しても意味がありません。「学生」「主婦」「サラリーマン」といったざっくりとした属性ではなく、あくまでその課題を持っていそうなペルソナを対象にする必要があります。発言や行動から、インサイトを得た対象者に仮説検証できることがベストです。その上で、『どのレベルで何を検証するのか?』を明確に意識して仮説検証を進めることが重要です。

前述の通り、この段階では、細かい機能や性能など、精緻化されたアイデアに落とし込む必要はなく、まずはコンセプトレベルで対象ユーザーに仮説検証をしていきます。

 

5. ビジネスモデルデザイン

仮説検証のプロセスで対象ユーザーからのフィードバックを元にアイデアを改善し、ブラッシュアップしていき、事業としての方向性が見えてきたら、いよいよビジネスモデルを構築していきます。

今回現地で実施したような「デザインリサーチ」によって得られた知識や情報は確かに有用ですが、事業として前進させていく場合には、意思決定者の「承認の壁」に必ず直面します。その際に、理論的な筋立てを視覚化することで、社内外で関わるさまざまな関係者にアイデアを素早く共有できるツールとして、「ビジネスモデルキャンバス」があります。

今回はこのビジネスモデルキャンバス(リーンキャンバス)を使って、いくつかのビジネスモデルを構築しました。ビジネスモデルキャンバスでは、顧客、提供する商品、自社の強み、販売チャネル、パートナーなど、ビジネスとして成り立たせるために定義が必要な9つの項目を埋めていきます。

参考:「ビジネスモデルキャンバスの効果的な使い方」

ビジネスモデルデザインのポイント

アイデアをビジネスとして成り立たせる上で、有用性(顧客のニーズ)、経済的実現性、技術的実現性の3つを満たしている必要があります。得てして、『自社の技術や資源でできるか?』という議論が生じますが、昨今は大企業とスタートアップ企業のオープンイノベーションや、外部のパートナーとの連携の文化も盛んです。「自前主義」から脱却し、外部の人や組織との連携も意識しながら可能性を探っていくことで、イノベーションの可能性もさらに高まります。

6. 次のステップに向けて

現地ロンドンでの集大成として、有識者を招いたビジネスアイデアのプレゼンテーションを実施しました。概ね良い評価を得られましたが、事業の目的はあくまで継続し、成長させていくことであることは言うまでもありません。

企業内新規事業を発足し、継続させていく上で、自社の資金力や資源、ネットワークを生かせるという大きな強みを持つ企業もあります。その一方で、あらゆるステップでの意思決定の遅さや、大きな組織故の合意形成の難しさなど、さまざまな壁を乗り越えていかなければなりません。理想論が先走り、会社の理解が得られずモチベーションが低下してついには火が消えてしまう、という例は実に多く、逆に、理論先行でモチベーションがついていかないというケースもよく見られます。

ソーシャルイノベーションの視点を持った新規事業開発においては、俗に言う「ロマンとそろばん」の調和がとても重要です。増えていく関係者に対して、時には感性に訴えかけ、時にはロジックで説得し、迂用曲折を経て事業を育てていく過程で、使命感やコミットメントが醸成され、強固になっていきます。

その上で最たる原動力となるのは、やはり事業を推進する本人のWill(情熱や使命感)ではないでしょうか。仕事は「人」がするものであり、事業の組織もまた、その「人」によって構成されるものだからです。今回の実践活動を通して、若手社員のサービスデザインや新規事業開発の手法を、高いレベルで学習していただくことができました。しかし、新規事業を創出し、事業として継続的に成長させていく上で最も重要なのは方法論ではなく、さまざまな壁を乗り越えていく、個人の内発的モチベーションが最大の原動力です。個人の情熱や使命感をベースに、所有感を持って推進していくことが何よりも重要なのです。

M社における若手社員による海外新事業開発活動は、2016年に始まり、今回で3回目となりました。過去のプロジェクトメンバーも活動を継続し、有志での新規事業チームが活性化するなど、少しずつではあるものの、良い流れができてきました。若い社員の皆さんには、今後も海外事業、新規事業へのモチベーションを絶えることなく持ち続け、イノベーション創発や事業創造の活動を通して、より仕事を豊かなものにしてほしいと願うばかりです。

お知らせ

bridgeでは、海外での新規事業開発実践プログラム、シリコンバレーでのイノベーションリーダーシップ育成プログラム、東南アジアでのサービスデザインスプリントなど、グローバルネットワークを使ったプロジェクトも多数展開しています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
リンク : https://www.bridgedesigners.com/project/2642/

−written by 鈴木郁斗/株式会社bridge

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