新規事業がうまくいかない理由を聞くと、たいてい「リソースが足りない」という答えが返ってきます。人が足りない、時間が取れない、お金が出ない。
ただ、調査データを見ていくと、分かれ目はお金の量ではなさそうでした。お金の出し方のほうです。
bridgeが2024年1月に実施した調査の結果です。新規事業開発に取り組む担当者300名のうち、「新規事業が重要」かつ「成功している」と回答した150名を成功グループと定義しています。
設問は「新規事業を推進するチームや組織は、意思決定をもとに検証活動に必要な予算を配分している」。
| 回答 | 成功グループ(N=150) |
|---|---|
| 非常に同意する | 22.0% |
| やや同意する | 50.6% |
| どちらともいえない | 24.7% |
| あまり同意しない・まったく同意しない | 2.7% |
| 同意計 | 72.6% |
この項目は、非成功グループとの差がとくに大きく開いた部分でした。
予算の話には前提があります。同じ調査で、成功グループの76%が「新規事業に関する評価方法や撤退基準を設定し、それをもとにGO/STOPの意思決定をしている」と回答しました。
順番はこうです。まず、何を確かめたら次に進み、どうなったら止めるかの基準がある。基準があるから判断ができる。判断ができるから、そこにいくら出すかが決まる。
逆に言えば、基準のないところに予算はつけられません。いくら出せばいいのか、誰にも分からないからです。
ここからは推測を含みますが、非成功グループの状態はこうではないかと考えています。
新規事業も既存事業も一律に「経費」は使える。ただし「予算」という概念がない。
経費は、使ったあとに精算するものです。誰かの裁量の範囲で、その都度なんとかする。だから金額の上限は曖昧ですし、使うたびに説明がいります。
予算は、先に決めて割り当てるものです。何をいつまでに確かめるか、そのためにいくら要るか。決めた側にも責任が生まれます。
同じお金でも、この2つはまったく違う行為です。そして現場から見ると、違いはもっとはっきりします。経費で動く新規事業は、毎回お伺いを立てなければならない。予算がついた新規事業は、決められた範囲で自分たちで判断できる。この差が、検証のスピードをそのまま分けます。
以前、新規事業創出に成功した企業にインタビューをしたときに聞いた話です。
ある程度の仮説検証用の資金はプールしてあり、プロジェクトのテーマに合わせて予算を割り当てている
年度の計画に個別の事業を書き込むのではなく、検証のための原資をまとめて確保しておくやり方です。社内提案制度であれば、選考を通過したチームから「次のフェーズで何を確かめるか」の提案をもらい、それに対して配分する。
規模の大小ではありません。プールがあるかどうか、配分の根拠があるかどうかです。
bridgeが2026年6月に実施した別の調査でも、同じところに差が出ました。売上50〜500億円の中堅企業に勤める経営・役員151名、現場マネージャー152名の計303名が対象で、新規事業活動の達成度を10段階で自己評価し、7〜10を成功企業、1〜4を非成功企業と定義しています。
2つの調査は対象も設問形式も異なるため、数値をそのまま比較することはできません。ただし、判断の基準があるかどうか、そしてそれを経営が引き受けているかどうかが成否に効いている、という構造は共通しています。
予算制度をつくる、という話にする必要はありません。順番はこうです。
その事業が成り立つために必要な前提のうち、外れたら成立しないもの。かつ、まだ確かめていないもの。この2つが重なるところだけを拾います。
誰に聞くのか、何を作るのか、どこまで分かれば十分とするのか。プロトタイプなのか、ユーザーテストなのか、ヒアリングなのか。
検証方法が決まれば、いくら要るかと、いつまでかかるかは出てきます。
この順番で出てきた金額は、もう経費ではありません。何を確かめるために使うかが先に決まっているからです。
そして撤退基準も、ここで自動的に決まります。重要だと判断した仮説が否定されたときが、止めるときです。基準を別途つくる必要はありません。仮説を書き出した時点で、すでに書かれています。
株式会社bridge「新規事業が生まれる組織づくりに関する調査」(2024年1月/有効回答300名)
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株式会社bridge「bridge 新規事業実態調査 2026(INSIGHT REPORT 2026)」(2026年6月/有効回答303名)
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調査の主要データはこちらのページで公開しています。構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。