CASE STUDY

人材育成

モスフードサービス:新規事業公募コンテスト「Challenging 01」

課題

新規事業をボトムアップで生み出す仕組みの構築

bridgeがしたこと

プログラムの全体設計から仮説検証活動までを統合的にサポート

成果

39件の新規事業アイデアが生まれ、2件の事業案が選考通過

株式会社モスフードサービス  (中央)笠井洸さん / 執行役員 経営企画本部長 (左)古谷昌史さん / 経営企画本部 経営企画部 経営企画グループ付 グループリーダー (右)永井真美さん / 経営企画本部付 グループリーダー   ※撮影時のみマスクを外しています。

 


株式会社モスフードサービス(以下、モスフードサービス)は、2021年4月、新規事業公募コンテスト「Challenging 01」をスタートさせました。それから1年の時を経て、2つの案件が実証実験・市場検証フェーズへと突入しました。

bridgeはこれまで、プログラムの全体設計から仮説検証活動までを統合的にサポート。さまざまな場面で伴走支援を続けてきました。

イノベーターズセッションやピッチ&フィードバックなど、活動の様子についてはこちらの活動レポートで詳しく説明しています。

今回は、モスフードサービス 経営企画本部の笠井様、古谷様、永井様に「Challenging 01」のこれまでを振り返っていただくとともに、bridgeの伴走支援に対する感想などを伺いました。

 

これからの50年を牽引する新規事業開発

▼株式会社モスフードサービス 笠井洸さん(執行役員 経営企画本部長)

─Q まずは、新規事業公募コンテスト「Challenging 01」の導入背景を教えてください。

笠井洸(以下、笠井)

もともとはベンチャー要素の強いモスフードサービスも、1972年に創業してから50年という時間の中で成熟期を迎えるようになり、いつしか「モスバーガー」という既存事業だけに集中するような時期が続いていました。その結果、少しずつ社内のアントレプレナーシップが減退するような感覚を抱くようになっていたのです。

外食産業は人口減少や人手不足などの逆風が吹く環境でもあるため、これからの50年を考えた時に、市場の変化に対応できる新規事業開発は不可避です。そこで企画されたのが、今回の新規事業公募コンテスト「Challenging 01」でした。

─Q プログラムの設計〜運用に関して、bridgeの伴走支援を必要としたのはなぜでしょうか?

笠井:実は3年ほど前から、新規事業公募コンテストの構想を描き始めていました。書籍を読み、セミナーに参加し、事例なども積極的に集めていました。しかし学べば学ぶほどに、新規事業開発に関する知見やリソースが自社に足りていないことを痛感していたんです。

この問題を解消するには、仕組みだけを提供するコンサルタントに依頼をするよりも、一緒に考えながら進めてもらえる「伴走型」の支援が合っているのではと考えるようになりました。

古谷昌史(以下、古谷):bridgeさんの存在を知ったのは、2008年に資本・業務提携契約を締結した、株式会社ダスキン(以下、ダスキン)さんからの紹介でした。社内ビジネスアイデアコンテスト「やってみるプロジェクト」をbridgeさんと一緒に取り組んだと聞き、興味を持つようになりました。

その後、調べれば調べるほど、bridgeさんのやり方はモスフードサービスと相性が良いと確信するようになりました。どのプロジェクトに対しても親身に伴走する様子が感じられ、温かく手ざわり感のある印象だったんです。

永井真美(以下、永井):ちょうどその頃、私がbridgeさんとの窓口にアサインされたんですよね。初めはダスキンさんを交えた3社での打ち合わせでした。実際にお会いしてみてさらに「当社の雰囲気と似ている方々だ」と感じたのを覚えています。

具体的には、親身に相談に乗ってくれる姿勢であったり、どんな悩みであっても受け止めてくれるような信頼感があったり。これなら初めて新規事業の公募コンテストに挑戦する社員であっても、安心して取り組めるだろうなと思えたんです。

─Q 今回、ボトムアップのアプローチを選択した理由は何だったのでしょうか?

古谷:一つには、社内のアントレプレナーシップを育む目的があります。創業者の櫻田から、モスフードサービスに宿る起業家精神は現在に至るまで強く受け継がれてきました。2016年に代表取締役社長に就任した中村も同じです。

「手を挙げよ」「アントレプレナーシップを持て」と、事あるごとに社長は口にします。その想いに応え、これからの50年をリードできる社内起業家を育成することが「Challenging 01」には求められています。

加えて、新規事業に対する「社員の意欲」の受け皿も必要でした。これまではトップダウンで事業を展開することが多かったため、現場のアイデアを吸い上げる仕組みがありませんでした。当社で働くメンバーは皆、モスフードサービスが好きで入社した人たちが多く、何か貢献できることはないかとアンテナを張っています。

今回の新規事業公募コンテストが機能することで、社員の想いやアイデアを形にする仕組みが制度として整い、成長を促せる機会になるのではと考えたことがボトムアップのアプローチを選んだもう一つの理由になります。

経営戦略・理念を「課題マトリクス」へ昇華

▼株式会社モスフードサービス 古谷昌史さん(経営企画本部 経営企画部 経営企画グループ付 グループリーダー)

─Q 1年を通して「Challenging 01」を実施してみた手応えはいかがでしょうか?

古谷:初めての試みだったため、新規事業のアイデアが出るかどうかの心配はありました。結果的に39件の事業案と内2件の選考通過があり、現在は実証実験・市場検証フェーズへと進んでいます。

応募してくれたメンバーは通常業務に取り組みながらの挑戦だったため、時間的・体力的にも制限された状態だったはずです。それにもかかわらず社内からは「大変だけど楽しく取り組んでいる」「自分の考えを形にできるのはやりがいがある」という声がありました。きちんと制度で示せば反応があるのだと嬉しくなりましたね。

笠井:応募数が増えた大きな要因として、「9+1の課題設定」が非常に効果的だったと感じています。bridgeさんにお願いして本当に良かった、と思えた瞬間でもありました。

私たちには「人間貢献・社会貢献」という経営理念があります。社員の多くはその言葉に共感し、この理念のもとモスフードを通じて社会貢献がしたいと考えています。しかし抽象度が高いこともあり、いざ具体的にアクションを起こそうにも動き出せないということが少なくありませんでした。

その解決策としてbridgeさんは「9+1の課題設定」(下図)を準備してくださったんです。

古谷:会議で実際に使用している経営資料をbridgeさんが読み込み、モスフードサービスの事業戦略や経営理念を理解してくださったうえで、今回の「Challenging 01」に参加している現場のメンバーに向けてまとめてくれたのです。

経営層だけで使われていた共通言語を「課題マトリクス」として整理し、今回の公募テーマに合うよう最適化してくれました。図を見ていただくと「子育て」「地域貢献」「介護」「雇用創出」など、社会課題と掛け合わせる形での提案になっています。

これによって、自分のアイデアをどう具現化すれば良いのかがわかり、メンバーもまた一歩を踏み出せたのだと思います。

新規事業のロールモデル候補「市場検証フェーズへ」

▼株式会社モスフードサービス 永井真美さん(経営企画本部付 グループリーダー)

─Q アイデアのセレクト後、仮説検証の3ヶ月がありました。何か課題などはありましたか?

永井:今回のプログラムの流れとして、アイデア募集やブラッシュアップを行う「アイデア創出」のフェーズがあり、次に事業仮説を検証するためのインキュベーションプログラムがありました。

その後、プロトタイプの検証時期が10月〜12月まで続いたのですが、メンバーが持つ経験やスキルセットにより、サポートの仕方が大きく変わることに気づきました。例えば営業経験が長いと「資料作成」に苦労をしたり、反対にオフィスワーク中心の場合は「行動の後押し」が必要になる傾向があると感じました。

また20代の若いメンバーからは、「自分で考えて動くことの大切さを学んだ」という感想が届いたことが印象的でした。おそらくですが、新入社員の多くはモスバーガーの直営店舗に勤務することが多いため、こういった経験自体が初めてなのだと思います。

お店にはマニュアルなどを含め、模範的な「型」が示され、そこに合わせてどれだけ上手に運営できるかどうかが重要になります。その意味では今回の「Challenging 01」は、真逆の取り組みであり、かつ刺激のあるチャレンジだったのかもしれません。

─Q ピッチコンテストでは社長を含め、役員総出での参加だったことが印象的でした。

笠井:私たちとしては「そういうもの」というイメージだったので、この質問をいただいて初めて「特別なことなんだ」と認識しました。

もし理由を挙げるのであれば、モスフードサービスのカルチャーだから、というのが答えかもしれません。私たちは、手を挙げて頑張る人(=アントレプレナー)を全力で応援する文化があるため、半年間一生懸命に取り組んだ人たちにふさわしい場として、社長を始め、役員総出での参加が当たり前なことだと捉えたのだと思います。

Challenging 01の審査員として参加したモスフードサービス中村社長(2021年12月)

─Q 最後に「Challenging 01」に関する、今後の展望をお願いします。

笠井:現在進んでいる2つの起案は、今後のロールモデルにもなるのではと考えています。抽象的な表現になりますが、「大きな市場への挑戦」と「ファン作りと顧客体験」がそれぞれ求められる取り組みです。性格が異なるアイデアだからこそ、今後の展開が楽しみです。

古谷:「ファン作りと顧客体験」という意味では、フィードバックを得て商品やサービスを改善することは、これまでもやってきたことでした。それでも、チェーンの効率や生産性を考えると、なにもかも全てを反映できるわけではありません。それが今回の「Challenging 01」をきっかけに、新規事業へと反映させられる動きにつながれば、企業としても新たな成長のチャンスになると考えています。

永井:このような活動は、継続させることに意味があると思っています。今回だけでなく、次回も、その次もチャレンジできる機会があることが大切なんです。新規事業のアイデアは日々の現場から生まれると考えれば、インフラとして「Challenging 01」が存在する意義は大きいと思っています。

また、グループ会社からの参加も今回数名あったので、この人数を次回はもっと増やしていきたいです。門戸を社内だけにとどめておくことは、非常にもったいないというのが会社としての見解でもあります。

笠井:将来的な話ではありますが、今回の「Challenging 01」を発展させ、ゆくゆくはFC加盟店のオーナーや社員、スタッフの方々も巻き込んでいければと構想しているんです。

FC加盟店のオーナーは、会社員の私たちよりもよっぽどアントレプレナーシップをお持ちですし、加盟店の社員やスタッフは日々現場でお客様の生の声に触れています。モスフードサービスならではの受け皿を作ることで、これらのエネルギーを集約させた活動ができると考えています。

ただ、FC本部として仕組みを提供する立場である以上、ゼロから一緒にトライ&エラーしましょうという関係は考えていません。まずは2年、3年と時間をかけ、確かなものを構築してから共創の取り組みを広げていきたいと思っています。

経営理念である「人間貢献・社会貢献」を現代の表現に直せば、「ウェルビーイング」と「サステナブル」になると解釈できます。そう考えると、ライフスタイルの提案や地域貢献と結びつけるのは自然なことだと思うんです。

「モス(MOS)」の由来である、M-Mountain(山)、 O-Ocean(海)、S-Sun(太陽)から想起される自然との共創を今こそ実現し、ハンバーガーブランドから「ウェルビーイング&サステナブル」のブランドへと進化させていくことが私たちの目指すところです。

 

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